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Sa+: ISSUE #004 Speech Act, Statement, and Artistic Production
#004 Sa+ 声と芸術生産 Background 現在、世界中で6000万を超えようとする数の人々が、戦争による迫害や貧困から逃れるため、行き着く先も分からぬままに自国を離れることを余儀なくされている。人間であることの尊厳を奪われ、助けの手を差し伸べられないままに命を落とした人々の数は正確に知ることさえ不可能だろう。欧米諸国の介入主義にも大きく依拠する対立が引き起こした第二次世界大戦後最大の難民危機は、民主主義の限界をつきつけ、平和の意味を、そしてヒューマニティとは何かを同じ時代を生きる私たちに問いかけている。一方、日本は昨年、武力を行使する方向へと大きく舵を切った。長期に渡る経済的停滞の只中で起きた東日本大震災と福島原発事故によって社会が—「安定」を失った人々の心が—揺さぶられ続ける中で、「平和」の意味が性急に書き換えられつつある。そして、現在の戦争や武力介入がもたらしている惨状を目の当たりにしながら不戦の意義を棄てようとする政府に対して、多くの人々が賛否の声を上げ、日本という国家のあるべき姿を主張している。たった5年前ですら、誰も考えられなかったような大規模なデモ、「国を脅かす」者たちへのヘイトスピーチ、インターネットの匿名性を盾に、暴力を自制しない言葉の応酬。 しかし、こうして私たちに聞こえてくる声の多くは、複雑に絡み合う事象を単純化したロジックによって二極化されてもいる。そのような声は時に激しい情動を引き起こし、それを発する人々と向けられた人々の双方に、さまざまなかたちで染みこんでゆく。耳をふさいでも聞こえてくる声の力から影響されずにいることは難しい。強い声に同調することには自己を委ねる心地よさがある。一方で、周りの声に抗い、自らの声を伝えることを諦めないでいるには信念を必要とする。ノイズにかき消される小さな声や沈黙に耳をすまし続けることには、他者への配慮と共に内省を要する。 私たちはどのように声を発していて、他者の声を聞いているのか。自らの声をぶつけることも、自分の声を押し殺すこともなく、いかにして他者と言葉を交わすことができるのか。これらの問いを軸に、今の社会を生きる私たちのふるまいを、そして今の時代に対峙する芸術の実践とその可能性を考察するプラットフォームとして今号を発刊する 。 +journal チェ・キョンファ CONTENTS