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NovelJam2018秋 当日審査講評 | NovelJam
Photo by 川島彩水 当日審査員からの講評を公開します。(順不同・敬称略) 講評と岡目八目(藤谷治) まず講評から。最優秀賞受賞の『いえ喰ういえ』は全作品中最も勢いがあり乱暴なのが、このイベントの趣旨および雰囲気にふさわしいと感じました。技術的にも確かなものがあり、読むのが楽で痛快でした。 個人賞を差し上げた『あなたの帰る場所は』は、小説技術としても、内容や推敲、校正のレヴェルから見ても、決して上質の作とはいえません。そうであることもまた、このイベントの特色を示しているのではないかと思います。この作品は出来として不充分だけれど、自身の体験から出てくる「これを書きたい」という真心は疑いようもありません。その真心を僕は愛しました。 つまり僕の判断では全十六作が最優秀賞受賞作と僕の個人賞受賞作の中で技術的な優劣を競っています。そして最優秀賞と個人賞の差は、そんなに大きく開いているわけではありません。 Novel Jamは興味深い試みで、だからこそ審査員も引き受けました。しかしイベントの趣旨や内容を話で聞いている段階から、よく判らないものがあり、実際に会場に行って、参加者の作品を読んで、評価を下した現在でも、この催しを完全に理解できたわけではありません。 イベントタイトルが示すように、これはジャム・セッションを小説でやるという試みなのでしょう。作者と編集者とデザイナーが一堂に会して、その場で与えられたお題をもとに、驚くほど短時間のうちに小説を制作し、発売さえする。そこには無理難題を与えられた人間が覚える高揚感と、祝祭的な切迫感が生まれます。審査員は審査員で、1万字の小説を16作読むというなかなかの苦行を強いられていましたから、現場を見ることは殆どできませんでしたが、会場内に緊張と興奮が漲っていたのは確かでした。 しかしライブハウスで客を前に演奏されるジャム・セッションが、演奏技術も経験も豊かなプロたちによって演奏される一発勝負であるのに対し、これはむしろこれから技術や経験を積んでいこうという若々しく未熟な人たちの場所です。興味を持って参加したはいいけれど、いざ演奏を始めよう、つまり小説を作ろうという段になって、自分やパートナーたちの持ち合わせている少ない手数で勝負しなければならないという事実に直面し、当惑したり混乱したことは、想像に難くありません。