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007 SPECTRE | Case Of Akvabit
東西冷戦、宇宙開発、冷戦後の情勢、最新技術。007は、常に時代を取り入れ、スクリーンに映し出す。ダニエル・クレイグのボンドになってからの007も最初の2作は、最新の技術を惜しげもなく展開していた。例えば、スタイリッシュなオープニングシーン。クレイグ版のボンドは、オープニングシーンだけで素晴らしい映像美が楽しめる。ここだけで映像技術の最先端が味わえること間違いないほどの。ボンドがスマホを自在に扱う姿や巨大なタッチパネルを自在に操る様子からはIT技術の最先端が読み取れた。それこそ、どんなSF映画よりも未来の技術を先取りしている、それが007だった。 が、前作のスカイフォールからは、意図してか、時代に007を合わせていない。仕掛けもストーリーも内省的なボンドに合わせて原点回帰している気がする。仕掛けについてはあまりにITの技術発展が早すぎて、作中でどう活かすか決め切れていないのではないか。前作スカイフォールからQ役がベン・ウィショーへと替わっている。IT技術が全盛の今は年輩のQよりも若々しいQのほうが、リアリティがあってよい。ベン・ウィショー扮するQはIT技術を活かすのにふさわしい外見で、はまり役といえる。それにも関わらず、映画の仕掛けからはIT技術が遠ざかっているように思えるのは皮肉だ。本作でもCがMにドローンを使えば007など不要と言い放つ台詞がある。つまり、007はもはやITの進展には追い付けない。そのことを自覚し、方向転換を宣言した台詞ではなかったか。 007の製作陣もそういった時代の空気の変化を敏感に察知し、007の中におけるITの役割を控えめにしたと思われる。IT技術の替わりにここ2作で目立つのはボンドの内面描写である。ボンド自身の過去に潜む秘密を抱えながら、ボンドがどう振る舞い、どうスパイとしての自分を律してゆくのか。本作でも寡黙でありかつ僅かに揺れるボンドの内面が見事に描かれている。先ほど、CがMに対して語る台詞を紹介した。それに対してMがCに対して返答する台詞がある。ドローンもその他IT技術をいかに使おうとも、結局殺すか殺さないかを決めるのはボンド自身だと。この台詞に製作者たちの想いの一つは凝縮されているといえるだろう。