mother goose rhymes

昼下がりにバターのにおい

今週の金曜の夜も、いつものように花屋にいた。えらんだのは白のスイートピーと紫のスカビオサ。どちらも野に咲く花のような可憐な雰囲気がある花だったから、口を細くねじったガラスの花瓶に活けてやった。摘んできた花を素朴に飾っているような雰囲気が良くて、部屋の本棚の空いている場所にきっと合うだろう、と花瓶を置いた。隣には愛用している月夜色のインク。眠たげな表情をした、カメオのついた首輪を着けている灰色の仔猫のぬいぐるみも並べた。本棚に挿さった、山尾悠子「歪み真珠」の濃縹の背表紙に紫と白の花が映えてうつくしい。


お気に入りの場所が出来て気分が良くなったから、大家からお裾分けされた食パンをフレンチトーストにしようと思い立った。パンを包むビニール袋には「最高級食パン」と金色の文字で記してある。なんでも大家の営む店に来たパン工場に勤める客から貰ったものらしい。喫茶店に卸すような、普通の食パンの四倍はあろうかというくらいの大きさで面食らったが、冷凍しておいたら一ヶ月あれば食べ切れるだろうと思いありがたく頂いたのだった。
贅沢に分厚くスライスしてたっぷりの卵液に浸したところで砂糖を入れ忘れるというなんともお粗末な失敗に気づき、表面にお砂糖を振って焼き付ければ何とかなるかしらんとそのまま冷蔵庫に仕舞いこんだ。真夜中にぼんやり料理をするのは、こういうことが起きかねないので危険だ。がっかりしたまま部屋に戻り、本棚のスイートピーに鼻を近づけると、少し青い、ほんのりとした甘さが香った。冬の夜に合う、少し切ないような、つめたくあまい匂い。大きく深呼吸をする。肺の隅々まで冬の空気を取り込んで、ひとつあくびをし、布団の中に潜り込んだ。ひたひたと卵と牛乳の浸み込んだ、ナイフを入れるとぐじゅ、と崩れる、バターをまとったやわらかなフレンチトーストのことを考えながら。


“Hush, baby, my dolly, I pray you don’t cry,
And I’ll give you some bread, and some milk by-and-by;
Or perhaps you like custard, or, maybe, a tart,
Then to either you’re welcome, with all my heart.”
――「Hush,baby,my dolly」Mother Goose Nursery Rhymes


私が小学校低学年だった頃、自分の中だけで大いに流行していた遊びがあった。それは「目を瞑って歩くこと」。如何にも子どもが考えそうな馬鹿馬鹿しいアイデアなのだが、当時の私はいたって真剣に「目を瞑って」の登下校に励んでいた。
家から小学校までは二キロ強の道のりだから、全てを目を瞑ったまま歩くのは難しい。なので、百メートルほどの距離を目を開けたり閉じたりして歩いていた。目を閉じていれば当然ながら様々なアクシデントに見舞われる。春先のまだ冷たい川に落ちる、田んぼの用水路に嵌まる、雪の被さった路肩から足を踏み外して二メートルほど下まで落下したこともあった。この時は内心死んだと思ったが、落下先の地面にはふかふかに雪が積もっていて無事だった。
びしょ濡れ、雪まみれ、あるいは膝や肘を擦りむいたことだって数え切れないほどあったけれど、それでも私は目を瞑って歩き続け、祖母を心配させたり怒らせたりしてマイブームを貫き通したのだった。


如何してそんなことをするの、と聞かれても、やってみたかったから、としか答えられない。目を瞑って歩けば怪我をするかもしれないなんて分かっていたけど、目を瞑ったら何が見えるのか試してみたかったのだ。どきどきしながら一歩一歩前に進んでみたかったのだ。手に触れる草花におどろきながら。目蓋の向こうで光る太陽を眺めて。ふるえる心で。
結局私は何でもやってみたいのだ。子供の頃から、それは変わっていないのかもしれない。たくさんやりたいことがあって、八十年の人生なんて直ぐに終わってしまうから、身体がなめらかに動くうちに、何でも経験したいのだ。


週末に花を買うこと、お菓子を作ることが今のマイブーム。移り気で飽き性な私だからいつまで続くかは分からないけれど、花を買う喜び、部屋に漂う甘い香りは何ものにも代え難い幸福であると思うから。ブームの続く限りは続けていきたいと、たっぷりの蜂蜜を垂らしたフレンチトーストのかけらを口に運びながら思った。


“What are little boys made of?
Snips and snails,
And puppy dog tails,
That’s what little boys are made of.

What are little girls made of?
Sugar and spice,
And everything nice,
That’s what little girls are made of.”
――「What are little boys made of?」Mother Goose Nursery Rhymes

I need a storage solution, stat. I only have one wardrobe the size of a hamster cage and it looks like it was rejected from American IKEA. No, I can’t make do in my dorm with this STÜNKERSHÖO and the grossly unwashed shag rugs on the floor, where the rest of my clothes won’t be going. 

Criteria for recommendations is nothing that’s got some ridiculous Mother Goose nursery rhyme enchantment or whatever’s the speed. I don’t need “open sesame,” please. Get me a solid lock and key and ample storage space and I’ll buy you a coffee.