デング熱による死亡者はなかったのか?
 そのデング熱の流行に対して、厚生省側からは死者が出ることはほとんどないから心配要らないということが、一般国民向けのパンフレットなどで強調されました。しかし、実際には死者は出ています。その数少ない報告の1つが、長崎大学東亜風土病研究所の金子直という人によるものです。これは昭和18年4月17日付けの『日本医学及健康保険』という雑誌で、自ら、死亡例を紹介しています。ここでは次のように述べています。
 「多数の罹患者中には不幸な合併症で倒れたものもごく少数にはあった様だが、その一例を剖検する機会を得た。76歳男子。発病後21日目に死亡している。剖検では、漿膜下、殊に小骨盤腔、左季肋下、肋膜等の広汎にして高度の出血、膀胱粘膜の全域における出血性壊死性炎、腎盂、胃、腸等の粘膜出血、腎髄質部、心筋内の小出血など、全身が出血性素因に傾いていた。肝には鉄血色素の沈着著しく、小葉の中心は壊死に陥っている」
 これは、今で言うところの「デング出血熱」に近い病態ではないか、と思います。
 また、昭和18年には、長崎医科大学の看護婦さんが、デング熱から敗血症を起こし、死亡しています。
また、死亡ではないものの、いろいろな障害が発生しています。例えば、『日本伝染病学会雑誌』の昭和18年6月号で、兵庫県衛生課の大城俊彦という人が次のような報告をしています。「妊娠二ヶ月の婦人にして、デング熱に罹患し、月経が来潮し、流産したものもある」
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